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Thread (701 ) -- マウス成体の卵巣でoocyteの新生
No. 1574--青木不学. No. 1575--べ. No. 1576--青木不学. No. 1577--べ. No. 1666--べ. No. 1702--おやくわがた. No. 1703--べ. No. 1718--おやくわがた(一応、オス). No. 1724--べ. No. 1741--べ. No. 1948--べ. No. 1951--べ. No. 1952--通りすがり. No. 1981--新倉@MGH. No. 1982--べ. No. 1983--新倉@MGH. No. 1984--新倉@MGH. No. 1988--井原基公. No. 1989--新倉@元MGH. No. 1990--もと. No. 1991--べ. No. 2055--べ. No. 2056--べ. No. 2057--べ. No. 2058--や. No. 2078--べ.
No. 1574 (2004/03/11 01:34) 青木不学

Germline stem cells and follicular renewal in the postnatal mammalian ovary. Johnson, J. et al., Nature 428, 145-150, 2004.

 この論文は、成熟雌マウスにおいても、新しい卵が作られ続けていることを示した論文です。  これまでの概念では、卵への分化は誕生前後に終了しており、誕生後には新しい卵が作られることはなく最初に作られた卵のプールからその1部が使われていくということでした。しかし、この論文では、誕生後すぐには数千あった卵胞のうち約1/3が誕生後数十日で退行してしまい、例えば誕生後42日では1200もの死んだ卵胞が発見されたと報告しています。その一方で、卵巣に存在する卵のstem cellから新しい卵胞が作られ続けており、計算上では一日当たり77個の卵胞が作られているそうです。その結果、誕生後数ヵ月後には大部分の卵が誕生後に作られたものに置き換わっているということになります。また、卵のstem cellが誕生後の卵巣に存在することについて、stem cellのマーカー遺伝子の発現、蛍光標識した卵巣の移植、stem cellを選択的に殺す試薬投与(こんな試薬があるとは知りませんでした)などによる様々な間接的な証拠を提示しています。

 まだ大雑把に読んだだけで、もしかしたら問題点があるかもしれませんが、ちょっと驚いてしまいましたので、ここに書き込ませていただきました。これからは、このstem cellの単離・培養に多くの研究者がしのぎを削ることになると思います。そしてそれが可能となったら、私たちの研究分野が飛躍的に発展することが期待されます。そしてもうマウスを殺す必要もなくなるかもしれません。


No. 1575 (2004/03/12 08:52) べ

青木さんこんにちは、早速私も読んでみました。 驚きです!

やっぱりNatureにはすごい論文がのりますねえ!VASAとSCP3がダブルポジの細胞が卵巣の表面に存在して、BRDUでも染色されるんですね!わたしは間違いないと想います。いままで信じられてきたことを打ち壊すって言う論文は、しっかりと構成しないと、けちょんけちょんにやられるので非常にむつかしいですよね。この論文もさらに証拠を積み上げるために、GFPマウスからの幹細胞を含む移植片を入れてます。それが移植先で卵胞を形成したときの、卵胞を見てみると光る卵子がホスト側の光らない卵丘細胞に囲まれているというのも証拠としてあげていました。(私的にはホストを赤マウスにして、赤い卵丘細胞のなかに緑の卵子って言う写真にして欲しかったですが、、、、)

この論文を読んで感じたのは、排卵数のばらつきとかんけいするかもしれないな言うことです。3週では過排卵が良く効きますが、5週あたりでは一度おちこみ、また復活します。これはホルモンに対する感受性ってことで片付けられてましたが、この卵幹細胞の増殖の波で説明できるかもしれませんよね。B6なんかでも、たくさん出るときとあまり出ないときがあるのが不思議だったんですが、それも卵幹細胞の増殖具合も寄与しているのかもしれませんね。

ってことは、この幹細胞の分裂を促進する薬剤、(ブスルファンの逆の薬剤)を投与すると過排卵ならぬ、超過排卵も可能かもしれませんね。一匹から200個の卵子が取れたりすると、手間も研究費も安上がりなんですけどねえ! でもそんなにたくさん輸卵管には入りきらないかな?

ブスルファンってのは雄に投与してspermatogoniaをなくさせることにも使われてますね。そうしたあとで、外からgerm cellを移植すると、ニッチが空いているので、よく生着するって言われています。もともとは免疫細胞をやっつけるようなことで見つけられようなことを呼んだ記憶があります。(記憶まちがいかもしれませんが)

いやー!たしかに衝撃的な論文でした!ご紹介ありがとうございました。


No. 1576 (2004/03/12 03:49) 青木不学

 私の希望と致しましては、どなたかがこの卵巣にあるstem cellの単離・培養に成功して、それを皆さんに配って下さるようなことがあればと思います(身勝手な発想で申し訳ありません)。あるいは、このメーリングリストの中でご興味を持った方が集まってプロジェクト組んでこれに取り組むというのもあると思います。それ位に価値のあることだと思います。


No. 1577 (2004/03/12 09:59) べ

幹細胞のみを培養するのはすぐに可能になると思いますが、そこから卵子っていうのはやっぱりもう少しクリアしなければならない点があるかもしれませんね。

たとえば、ES由来の卵子から子孫がとれたとは報告されていません。やっぱりまともな成熟卵子を得るには卵丘細胞がその回りを取り囲まないといけませんが、そういう立体的な培養となると、もう一工夫必要な気がします。

ただ、それは私の単なる先入観であって青木さんの言われるように、マウスの卵子10^6個の作り方なんていう論文が出るかも知れませんね。


No. 1666 (2005/09/21 08:23) べ

Oocyte Generation in Adult Mammalian Ovaries by Putative Germ Cells in Bone Marrow and Peripheral Blood • ARTICLE Pages 303-315 Joshua Johnson, Jessamyn Bagley, Malgorzata Skaznik-Wikiel, Ho-Joon Lee, Gregor B. Adams, Yuichi Niikura, Katherine S. Tschudy, Jacqueline Canning Tilly, Maria L. Cortes, Randolf Forkert et al.

http://www.sciencedirect.com/science?_ob=ArticleURL&_udi=B6WSN-4GRH1R2-K&_user=143915&_handle=V-WA-A-W-AD-MsSAYVA-UUA-U-AAWEDYCZCZ-AAWDBZZVCZ-BVEEDECUC-AD-U&_fmt=summary&_coverDate=07%2F29%2F2005&_rdoc=17&_orig=browse&_srch=%23toc%237051%232005%23998779997%23603001!&_cdi=7051&view=c&_acct=C000011799&_version=1&_urlVersion=0&_userid=143915&md5=67b0972af62bb00152676f72f24b73f2

上記の論文はこのスレッドのもとになったNatureの論文の続報です。 Natureのときには衝撃の論文という印象でしたが、今度のCellをみるとちょっと??????状態になっています。実は上の論文を知らなかったのですが、Nature Medicineで紹介されていたので気づきました。青木さんご存知でしたか?

要約すると、卵子というものは限られた数存在するのではない。卵巣の表層に卵子の幹細胞があってそれが分化して卵子が生まれる!→これは以前のNatureの論文。 今回は、じつはその幹細胞は卵子の中に存在しているばかりではなくて、骨髄細胞に由来する!骨髄から末梢血をとおって卵巣にたどり着くのだ。ということになっています。卵子のできないAtm-/-マウスにBMCを移植するとう~ん!何もないはずの卵巣内に卵胞が!末血移植の場合は30時間もすると、卵子と思われる細胞が現れてMVHを発現している様子が写真で示されています。

う~ん!投稿が3月で受理が6月です。超スピード受理ですよね。そんなに早く受理したレフリーはだれだ?Atm-/-マウスにGFPマウスのBMCを移植してやれば卵子の観察はもっといろんな角度からできるはずでは?念のために追記しておきますと、この卵子様?の細胞から子供がとれたとは書いてありません。

Nature Medicineの紹介記事の中ではこの論文のコレスポンディングオーサーのTillyさんはほかのラボでも再現できることを確認しろという批判があるが、そんな要求は的外れだ。文句があるなら自分で研究してウソだと証明しろ!と豪語しているそうです。この論文は別の意味で有名になる可能性が大きいのでは?


No. 1702 (2006/03/26 09:59) おやくわがた

すいません、素人考えですが、すると若年時に骨髄移植などを行うと、他人の子供を身ごもってしまう危険性がある訳ですか?


No. 1703 (2006/03/26 12:38) べ

世界に冠たるハーバード大学医学部のTillyさんが、世界に冠たるCellという雑誌に載せた論文が正しければ、おやくわがたさんがお考えになっているような可能性があることになります。

しかしこの論文は完璧ではありません。理想的な系で実験できるマウスを使いながら骨髄細胞由来の子供が生まれたという実験的な証拠を示していません。レフリーは、そこまで確かめないとダメ!と文句をつけて欲しかったですね。

結論として、骨髄細胞由来の子供が生まれたという証拠が示されるまでは一切心配する必要はないんじゃないでしょうか。

でも、おやくわがたさん(以下OKさん)の話をもっと深く考えてみましょう。 OKさんが骨髄移植を受けた。 OKさんが移植骨髄由来の卵子でみごもった OKさんの子供が生まれた。 ここで、親子鑑定をして見ましょう。 Okさんとお子さんから血液を抜いて親子鑑定をして見ましょう。 あれ?OKさんの血液は、提供者の核型に置き換わっていますよね。 とすると、ピッたり親子でまちがいないという判定になりますよね? どれが自分?何が自分? 臓器移植を受けたヒトは2重人格?

いや~、難しい問題ですね。


No. 1718 (2006/05/17 12:41) おやくわがた(一応、オス)

下らない質問に、わざわざコメントありがとうございました。 そうですね、続報を待ちたいと思います。

さて、関連というわけでもないのですが、ブタの皮膚にもoocyte stem cellがあるみたいですね。しかも卵丘細胞付き。 あくまでlikelyとの表現に留めているようですが。 Nature Cell Biology 8, 384 - 390 (2006)

元の細胞のキャラクターがはっきり分からないのですが、かなりの可塑性を持った細胞の様ですね。こういうcell plasticityの論文を読むと、皮膚や骨髄でectopicにoocyteが出来たりしないように、多分化能というautonomousな性格も、結局はちゃんと条件の整った、環境というnon-cell autonomousな機構に依存しているんだなぁと、しごく当たり前のことをいつも感じてしまいます。

他の動物種でも、皮膚から同様の細胞が簡単に採れたら面白いですね。

既にどなたかが紹介済みなら、重複して申し訳ございません。


No. 1724 (2006/06/18 12:41) べ

http://www.nature.com/nature/journal/vaop/ncurrent/pdf/nature04929.pdf

Tillyさんの論文に対する反証です。

Natureはこのところ超拡大路線をひた走り、Nauteなんとかっていう雑誌を次々と作っています。そのせいかどうかしりませんが、肝心のNatureから優秀なエディター陣が引き抜かれたんでしょうか?わたしはどうも最近のNatureのエディターの眼力にはかげりがみられるように思います。

Nature誌に載せた論文ごとにクリック数なんかを積算してそれをエディターのいる壁に貼ってあったりするような気がします。クリック数が多い論文を選んだエディターがいいエディターになるとかそういう仕組みを取り入れてたりしたらいやですね。M上ファンドが収益を第一の主要目的に掲げ、危ない橋をわたったように、エディターもクリック数さえ稼げればいいと思ってたりして! 杞憂であることを祈ります。

前置きが長くなりましたが、Tillyさんの論文に対するNature Articleの反証論文です。おなじHarvard大学からのAmy WagersさんのグループのEgganさんが書いています。私たちの作ったGreenマウスをC57BL/Kaに15代もバッククロスして実験に使っています。これはTillyさんの論文がこの一風変わったマウスを使用しているからです。

彼らの作戦は手術でgreenマウスと野生型マウスのおなかを結んで一匹のマウスのようにしてしまうparabiosisマウスを利用するというものです。もしも骨隋から卵子幹細胞が出て卵巣に入るなら、野生型の卵巣から緑の卵子が発現されるはずです。マウスをbarabiosisにして6から8ヶ月間飼育しています!すごい!でもマウスがかわいそ!そのあと排卵させたが野生型の卵巣からは緑の卵子は排卵されず、逆も起こらなかったということです。もちろん血球細胞はしっかり混ざり合っていることが示されているのにです。

Tillyさんの論文ではブスルファン処理することにより卵巣を空にすると骨髄から卵子幹細胞が24時間くらいで進入するとなっています。それで筆者らは片方のマウスをブスルファン処理してから緑マウスとparabiosisを作製してTillyさんらの論文にあるように2週間後または2ヵ月後に過排卵処理をしていますがやっぱり野生型からは緑の卵子は排卵されなかったということです。

蛇足ですが、最後にBMCの移植という追試実験をやっていますがこれもBMCから卵子への移行を発見できなかったということです。

結論はBMCから「排卵される卵子」はできないのではないか。ということです。もともとできないものを証明しようとするのは不可能なのにそんなことをやってるので、しょぼい結論になるのは止むをえませんね。頭が下がるほどご苦労様な実験をしているのですが、なんせ手間がかかりすぎるので、排卵させた卵子の数もせいぜい150個とかそんなレベルです。これではTillyさんらにとっては痛くもかゆくもないデータにしかならない可能性があります。でもだれも10000個見たが入ってなかったっていう実験するわけがないですよね。20000個目にひとつはいってるかもしれませんからね。この実験は意地になってやってると思うのですが、所詮は悪あがきに過ぎないような気がしました。これでArticleを書くのはNatureの商売に協力してるだけで、科学の進歩にはつながりにくいのでは?Natureさん(Cellさんも同じ!)にはもうすこしシビアなreviewを望みたいですね。←ちょっとエラソ~な言い方ですいません。反省 (-_-;)


No. 1741 (2006/08/03 07:23) べ

え~っ! このスレッドで「親くわがた」さんがご心配になってたように、今度は文部省が「骨髄など組織幹細胞研究、文科省がルール作り検討」に入る予定だとか?

http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20060802i315.htm

う~ん!これまでの論文が主張しているのは、あくまでも卵子「様」のものができたという主張だけで、誰一人として本物の卵子が出来てそこから子供が取れるなどという証明をした人はいないんですけどねえ!文部省の心配は杞憂にあたると思うのですが、、、、、、

規制はあくまでも実態に即したものであるべきで、影におびえて不必要な規制をかける必要はないと思います。むしろこの種の研究は規制するのではなくて、本当に「卵子」がBMCや皮膚の幹細胞から分化しうるのかということを検証する研究に補助金を出すのが正解だと思います。文部省の関係者の方にこのスレッドが届けばいいのですが、、、、


No. 1948 (2009/04/13 07:46) べ

現状の【卵子幹細胞】論文はあやしい!という立場をとっている私に、またあらたな抵抗勢力が出現しました!

上海交通大学からNature cell biologyへの報告です! http://www.natureasia.com/japan/highlights/details.php?id=319

published online 12 April 2009; DOI: 10.1038/ncb1869

幼若10匹から200から300の細胞、7匹位の成熟マウスから50から100のMVHポジの細胞をマグネットビーズで取り出すことができる。形態を観察するとほとんどはTypeA spermatogoniaと似ていた。そこでこれらの細胞を2週間で2回パッセージを行ってから(そんなに増えるのか!)MVHとBrdUをみるとほぼすべてがダブルポジだった。そんなに増えるのならBrdUポジは当然でしょう!コロニーの形はESなどとは異なっているが、発表した時点でこの細胞は15か月にわたりもとの形態を保ったままで68回もパッセージできているそうです! そして、この細胞株はOct4, MVH, Dazl, Blimp‑1,Fragilis, Stella and Rex‑1.陽性でc‑kit, Figla, Sox‑2, Nanog, Scp1‑3 ,ZP3陰性だそうです。

未分化なgermline細胞であることの証拠にtelomerase活性が高いと書かれています。カリオタイプも正常であると書かれていますが(65-80%)という値が低いのとFig3fにはこんなんでカリオタイプを数えたの?っていいいたくなる写真が掲載されています。

Igf2r と Peg 10やH19とRasgrf1のインプリントを調べると雌型になっていたそうです。(あれ?減数分裂前の卵子幹細胞にインプリントがかかってるんですか?)それって重要問題ですよね!しかし、筆者らはこの矛盾に気づかずに?減数分裂前のステムセルに正しくインプリントがかかっている。メデタシメデタシという流れで記述しています。ディスカッション部分でも再度インプリントにふれていますが、この筆者たちはインプリントの入る時期が雄と雌で異なっているということを知らないじゃないかなあ?

彼等はこのFGSCに対してレトロウイルスベクターでPGK-GFPを導入しています。(CAG-GFPにしてほしい!いくらでもお送りしたのに!)導入の一週間後に(導入効率は不明)サイクロフォスファミドとブスルファン処理により不妊化した雌の卵巣に移植しています。移植後2か月してから卵巣をみるといろんなステージの緑の卵子が見つかるそうです。卵巣内に超緑の卵子が育っている写真が掲載されています。 移植も簡単で卵巣に6マイクロリットルを注射だけみたいです。

子供を産ませて、85匹中の24匹にGFPを持つマウスが見つかったということですが、なんとGFPの検出にドイツ制のin vivo蛍光イメージング装置であるeXplore Optixを使ったということです。何でeXplore Optixなんか使うんでしょう?この原理はよく知りませんが特殊な試薬でラベルした抗体を投与すると体内でその抗体が集まった場所がわかるというような装置だったと思います。GFPならそのまま蛍光で見ればいいのですが、、、 わざわざそんな抗体を作ってin vivoイメージングする必要はまったくありませんが、、、、 その辺の理由は全く書いてありません。

おまけにGFPは脳に特異的に発現しているみたいに見えますがPGKプロモータって脳で高発現なんでしょうか?Fig.5cはグリーンマウスをよく使う私としては、まったく納得できませんでした。

抵抗勢力軍団には、あっそうだったのか!私があほやったんや!と思わせるような切れのいい論文を書いてほしいのですが、今回の卵子幹細胞論文も私の希望をかなえてくれることはありませんでした。【卵子幹細胞】の論争はまだまだ続くのかもしれません。

最近SpermEggのプログラムを書き換えたのでもしもコメントをつけられないなどの不具合がありましたら私までお知らせください。そこちょっと心配しています。


No. 1951 (2009/05/02 04:01) べ

Science 324, 320 (2009)

最近紹介した上海交通大学のWuさんの論文についての論表がサイエンスに載っていました。Tillyさんのコメントがあるので肯定的な部分もありますが、われらが懐疑派からはロベルバッジさんがコメントしてがんばっています。

GFPの光り方がおかしいことに関してのコメントはありませんでしたが、マグネビーズを一度でも使われたことがある方なら、そんなの一回とおすだけで取れるわけないという気持ちになってるとおもいますが、その点は指摘されていました。も一つ私うっかりしてましたがMVHって細胞質とかクロマトイドボディに存在するようなタンパク質なので、MVHポジ細胞を表面抗原を認識するのが原理であるマグネビーズで分離できるわけないですよね!そういうコメントがありました。

私のような年寄りの言うことをよく聞いて、皆さんもぜひ懐疑派の仲間にお入りください!


No. 1952 (2009/05/03 01:31) 通りすがり

通りすがってみます。

細胞株が樹立できているなら、リクエストされてみてはどうでしょう? どなたか試されました? 送ってくれないか、ゴミみたいなものが送りつけられてきそうですが・・。

実際問題こういう論文の取り扱いはどうしたらいいのでしょうか。 野放しにするわけにもいかないし。。 tillyさんのは否定が難しいですが、結局再現性がないとサイエンスとして成り立たないですよね。再審査制とか公開試験義務とか、、何かいい仕組みがあればいいのですが・・。

中途半端な反証論文でまたNatureとかはやめてほしいですねぇ。


No. 1981 (2010/02/27 05:13) 新倉@MGH

PrimeGen Biotech の研究グループが、生後マウス卵巣から生殖幹細胞を単離し、その培養に成功したとの論文を発表しました(Jason Pacchiarotti et al. Differentiation)。

膜型 Mvh を指標に生殖幹細胞を単離してきた昨年の論文と異なり、本論文では、Oct3/4-GFP マウスを用いています。

Fig. 1. GFP v.s. Mvh、SSEA-1、cKit との免疫蛍光共染色を行っています。あと GFP 陽性細胞での Oct-3/4、cKit、Mvh の遺伝子発現を RT-PCR にて解析。

Fig. 2. GFP 陽性細胞に 2N の細胞が存在することを FACS にて解析。

Fig. 3. 培養した雌性生殖幹細胞株における、Nanog、Oct-3/4、GCNA、GFR-alpha、cKit の発現を免疫蛍光染色にて確認。

Fig. 4. GFP 陽性コロニーの写真。

Fig. 5. 直径60マイクロほどに成長した細胞の写真。GFP 発現は確認していない。

Fig. 6. 大きく成長した卵胞様細胞の写真。GFP 発現は確認していない。                                      以上、

本論文の新規性は、GFP 陽性細胞を単離して、生殖幹細胞株を樹立した程度です。目新しさはありませんが、昨年の論文をサポートする論文としての価値はあると個人的には感じております。

ただ、昨年の論文を含め、単離した細胞が生殖幹細胞であることには懐疑的です。我々は、昨年、Stra8 陽性細胞が成熟おより老化マウス卵巣上皮に存在することを見出し、発表しました(宣伝みたいで恥ずかしいですが)。重要な点は、これらの細胞が直径5マイクロ程度であることです。10マイクロ以上もある Mvh 陽性もしくは GFP 陽性細胞から、小さな Stra8 陽性細胞へと分化し、そして再び大きくなって減数分裂を開始することは無駄のように感じます。また興味深いこととして、Stra8 陽性細胞のとなりには、見かけ上区別がつかない Stra8 陰性細胞が存在することが挙げられます。これらの細胞が真の生殖幹細胞ではないかと考えています。

卵新生という概念に対して懐疑的な方が多い事は知っております。ただ、我々は確信をもって、研究を行っております。子供を作るという究極の証明には時間がかかるかと思いますが、少なくとも「本当そうだな」と懐疑心(先入観)を払拭するレベルのデータを得ており、近く発表できるかと思っています。

もし Differentiation の PDF が欲しい方がおられるようでしたら、代表者の方へお渡しするかたちをとりたいと思います。べ先生、それで宜しいでしょうか。


No. 1982 (2010/02/27 11:01) べ

新倉さんこんにちは。メッセージをありがとうございます。このMLの読者の中にはそのPDFが欲しいという方がたくさんいると思います。うちの大学ではDifferentiationが見えるのですがon line publicationへのアクセスが良く分かりませんでした。PDFはどのようにリクエストすればよろしいでしょうか?(ご本人にメールでリクエストするのが一番正当?)

さて、新倉さんのメッセージへのコメントです。 私の卵子幹細胞株に対する基本姿勢は懐疑的なものですが、iPS以降いろんな細胞分化の研究が行われてがん細胞からiPSを取るとか、先日このMLで紹介したようにMEFからいきなり神経細胞を作る

http://133.1.15.131/SpermEgg/ViewOnlythreadREV.cfm?threadid=906

とかが可能であることが示されています。こんな報告をみると私たちの体を作っている60兆個もの細胞がそれぞれの場所でそれぞれの役割を果たすようにきっちりと収まっていることのほうが奇跡的?であるような気がします。そういう観点から見ると、新倉さんたちが証明しようとしている卵子幹細胞(風?)細胞株が取れるということは十分にありえることだと思います。

ただ、問題点を整理しておいたほうがいいと思うのは 【1】生後の卵巣を体の外に取り出していろんな培養液で培養したときに、卵子幹細胞(様?)のものが得られるということと 【2】卵巣には卵子幹細胞があって生理的な卵子供給源として機能している。 ということは別問題であるということだと思います。

バイオテクノロジーの観点からは前者が証明できればそれでおしまいであり、iPS精神で実験に取り組めばいつの日にか達成可能なのかもしれません。しかしながらそのことに成功しても後者が証明されたことにはならないと思います。逆に1の成功に対して2の証明がないというのはお門違いのクレームになると思います。このあたりの区分けが私自身の中でもこれまで交錯していたようにおもいます。今後はよく注意して考えたいと思います。なにはあともあれ新しい情報をありがとうございました。


No. 1983 (2010/02/27 11:16) 新倉@MGH

ベ先生、

建設的なコメント、有り難うございます。

先生がご指摘されました問題点は、我々も認識しております。私が Stra8 陽性細胞の存在を確認した論文でも、レビュアーから、生理的な卵新生に本当に寄与しているのかとのコメントを頂きました。そのために、Aging というショボイ雑誌に引き取ってもらった次第です。

ちなみに PDF は、ボスの Jon Tilly が last author にコンタクトをとって、手に入れた物です。


No. 1984 (2010/03/01 07:29) 新倉@MGH

ついでに紹介したい論文がありました。ご存知の方もおられるかと思いますが。

Oocyte numbers in the mouse increase after treatment with 5-aminoisoquinolinone: A potent inhibitor of poly(ADP-ribosyl)ation.

http://www.biolreprod.org/content/early/2010/01/26/biolreprod.109.080697.long

当初(3年程前)は、卵新生を強調していたらしいのですが、リジェクトされまくって、仕方が無くストーリーを変えたそうです。我々がこれまで発表した論文も一切、リファレンスリストに載っていません。Atretic follicle に関する figure があれば、良かったのにというのが感想です。

卵新生に関して、Cell の論文がかなりマイナスに働いてしまった気がします。ただ、骨髄移植をして、卵胞様構造体ができることは、私自身、何度も確認しております。当初、私が行っていた卵巣老化研究は、骨髄中心でした。生殖マーカー遺伝子発現にはじまり、移植後の卵胞形成に至るまで。残念ながら、今のところ、全てお蔵入りです。

ちなみに、生後マウス卵巣における Stra8 の発現を初めて確認した系は、老化卵巣ではなく、抗がん剤処理後に骨髄移植をした卵巣です。あるサンプルで移植後、卵胞様細胞が見当たらないのに、Stra8 が強く発現していることを見つけ、老化した卵巣でも同じ事がと思い、解析しました。

ベ先生がご指摘されてきた、生殖幹細胞(及び減数分裂前生殖細胞)の生理的な卵新生への関与と受精能を持った卵への分化、成熟への道はまだ先です。


No. 1988 (2010/04/07 05:11) 井原基公

通りすがりで初めて書き込みさせて頂きます。昨年12月のCellに、adult mouseでのFoxl2のノックアウトにおいて卵巣が精巣になる論文がありました(Cell. 2009 Dec 11;139(6):1130-42. Somatic sex reprogramming of adult ovaries to testes by FOXL2 ablation)。成体の卵巣に幹細胞があるのであれば、精巣になった卵巣にも幹細胞が存在し、それが精子になってもおかしくないと思いますが、この論文では精子が見つかっていなかったと思います。この所見はどのように説明されるのでしょうか? ところで今年のSSR meetingは皆様参加されるのでしょうか?


No. 1989 (2010/04/07 09:34) 新倉@元MGH

井原先生

前に読んだので、詳細は覚えておりませんが、いくつか考えなければならない問題があります。

1. 形成された卵胞中に雌性生殖幹細胞が存在するのか? 2. 卵巣と精巣の腹腔内の位置の影響 3. KO granulosa cell 由来 Sertoli cell の機能

1についてです。 雌性生殖幹細胞が卵胞中に存在することは確認できていませんし、精子へ分化しうるのかは全く分かりません。多くの方が、そんなものはどこにも存在していないと考えておられると思います。

2についてです。 精巣を腹腔上部(卵巣の位置まで)につり上げると、精子形成は抑制されます。仮に、生殖幹細胞が卵胞内に存在しても、減数分裂へ移行し、精子形成へ至るのかは疑問です。

3についてです。 雄性生殖幹細胞を KO 卵巣へ移植することは簡単です。果たして、精子を形成できるのかを検証すれば良いと思います。逆に、この簡単な実験が論文に載っていないのは、データがネガティブであったからだと、感じています。上述の問題2を考慮する必要がありますが。

取り急ぎ、 新倉雄一


No. 1990 (2010/04/07 10:32) もと

新倉さま

解説ありがとうございました。 とてもすっきりしました。 maternal側の幹細胞についてですが、私の周りにこの研究をやっていそうな人がおり、傍観者としては真偽のほどを早く明らかにしてほしいと思っています(私も懐疑派です)。 追伸:「先生」はとても恐縮してしまいますので「さん」の方がうれしいです。


No. 1991 (2010/04/07 11:14) べ

井原さん、ご紹介ありがとうございます。このCellの論文を見落としていました。すごくおもしろいですねえ!

Foxl2をKOすると一旦、出来上がっていた卵巣の構造が壊れて、卵巣に中に精細管ににた構造ができて、その管の外にはライディッヒ細胞が現れてテストステロンを分泌する!すごいですねえ!魚の中には場合により雄になったり雌になったりするのがいるそうですが、マウスでも転写因子一つでこれだけドラスティックに変化できるとは驚きです! ERKOマウスでも同じように卵巣が精巣様になるという論文がScience 17 December 1999: Vol. 286. no. 5448, pp. 2328 - 2331にありますね。

でも卵巣が転じて精巣のようになった構造の中にできてくる精細管様のものですが、大きさがまちまちなので精細管としてつながっているのではなくて元あった卵胞が魚の精巣にも見られるシスト様の構造を呈しているんでしょうね。(すいません中味をちゃんと呼んでないのでどこかにそういう風に書いてあるのかもしれません。)だとすると精細管内移植みたいに液を流しながら移植するのは難しいように思います。再構成精巣みたいな実験ならできるのでしょうか?

この恐ろしいまでの可塑性はすごいですねえ。ライディッヒの幹細胞がいったいどこに潜んでいたんでしょう!BMCから血流によって運ばれてきた?う~ん!わたしは卵巣の間質細胞は見た目や機能は違ってもライディッヒに非常に近い細胞なのではという気がします。このあと、再度何かの仕掛けでFOXL2を転換精巣に発現させると、また卵巣みたいになるんでしょうねえ!

世の中には立派な人からぐうたらな人までさまざまですが、遺伝子の世界も、精巣か卵巣かの切り分けを一人で仕切っている働き者の遺伝子がいる一方で、多くの遺伝子はまるで存在感がなく、いなくなってもマウスには何の変化もおこらない!う~ん!なんか人間の世界に似てますねえ!私がいなくなってもうちの研究室は何事も無かったかのように研究が進展する!う~ん!そんな馬鹿な!でもあり得る?!


No. 2055 (2012/02/27 09:17) べ

おっと~っ!!!

私の自動アラートに引っ掛かって来ました。TillyさんはMGHのReproductin関係の所長なんですね。凄くエライ?!?!

reproductive-age women Yvonne A R White, Dori C Woods, Yasushi Takai, Osamu Ishihara, Hiroyuki Seki & + et al

http://www.nature.com/nm/journal/vaop/ncurrent/full/nm.2669.html

Nature Medicine doi:10.1038/nm.2669

アラートで引っかかったニュース記事では以前には凄く叩かれたが、今回は大丈夫だという紹介です。Nature Medicineです。著者には3名の日本人(だと思います)が入ってます。この中のどなたか、もしもSpermEggをご覧になっていたら、解説願えませんでしょうか?私の自宅からはN Medが読めません!


No. 2056 (2012/02/27 09:43) べ

タイトルが欠けていました。フルのタイトルです。

Oocyte formation by mitotically active germ cells purified from ovaries of reproductive-age women


No. 2057 (2012/03/04 11:11) べ

以下、この問題に関する論文のPubMedのリンクを礒谷さんに手伝ってもらって集めました。子供が生まれた報告以外はすべてTillyさんがラストです。

最初は卵子にステムがあるのではないかという論文 Nature. 2004 Mar 11;428(6979):145-50.

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15014492

ついで、骨髄から卵子幹細胞が供給されているという論文 Cell. 2005 Jul 29;122(2):303-15

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16051153

究極の証明!培養した卵子幹細胞から子供が生まれたという論文 Nat Cell Biol. 2009 May;11(5):631-6. Epub 2009 Apr 12.

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19363485

そして今回の、ヒトの卵子幹細胞をDdx4でソートすると培養幹細胞として樹立できたたという論文です。 Nat Med. 2012 Feb 26. doi: 10.1038/nm.2669.

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22366948

これだけそろうと、教科書を書き換える時が来たと言わざるを得ませんが、報告者が偏っているのが大いに引っかかります。また、今回の論文では、DdX4は幹細胞のマーカーなので卵子に結合しないと書いてありますが、結合しないという卵子の証拠写真には透明帯がついているように見えます。これって証拠にはならないのでは????

卵子幹細胞にレンチでGFPをいれてから、卵子を分化させると卵子が光るといいうことを証拠にあげていますが、我々から見ると光っているという卵子の蛍光写真はバックグラウンドを増感してえられるシグナルにしか見えません。横に光らない卵子をおいて同時に写真を取らなければ、ポジと判定することは不可能だと思います。これを審査したレフリーはシロウト????一体だれなんでしょう????

というわけで、私はこの一連の論文の報告に関しては抵抗勢力に属したいと思います。そして、Nature 姉妹誌に 「喝!」


No. 2058 (2012/03/04 09:17) や

>ついで、骨髄から卵子幹細胞が供給されているという論文 >Cell. 2005 Jul 29;122(2):303-15

は、著者らが意図的だったか・そうではなかったかに関わらず、真実ではないとされていると骨随幹細胞の専門の先生からお聞きしました。やはり、喝!ということではないかと存じ上げます。


No. 2078 (2012/08/14 10:33) べ

ちょっと前の論文になりますが、私はサイエンスに掲載されたメダカの卵子幹細胞に関する論文を見逃していました。 http://www.sciencemag.org/content/328/5985/1561.short

メダカでは卵巣内に卵子幹細胞が存在するようです。田中実先生が直々にYouTubeから私達に語りかけてくれます! http://www.youtube.com/watch?v=fcwQ8o8gdb8&feature=player_embedded

たしかに魚の場合は、卵子幹細胞が存在するシステムになっていないと、性転換して精子を作るというような芸当は難しいでしょうね。

YouTubeにどれだけの永続性があるのかわかりませんが、いろんな先生が論文を発表した時に何かを述べてYouTubeに残すというのは面白いアイデアだと思います。科学が論文を主体にした世界から顔の見える映像を含んだ形に変貌してゆく過程なのかもしれません。


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